日本は北は北海道から南は沖縄まで、島国とはいえ意外と広く、また離島などでは独自の文化が築き上げられてきました。そんな中で「お葬式」の仕方も各地方によって異なってきているようです。その土地独自の作法や風習などがあり、そのお葬式への考え方も異なってきます。今回はそんな各地方でのお葬式の歴史と風習についていくつか紹介していきたいと思います。
北海道・東北地方
「北海道」おもに浄土真宗が多いこの地域では、焼香をした後に火葬します。初七日、七七日の法要を行ない、「忌中引き」と呼ぶ精進落としの料理を取ります。火葬のタイミングが地域で若干異なり、函館ではお通夜の前に火葬を行い、根室では葬儀の前に火葬を行ないます。
「青森県」
主に火葬した後に葬儀を行ないます。特徴として「いっぱい飯」と団子を持って祭壇に安置するという風習があります。また葬儀終了後に直ちに墓地へ向かい、埋葬します。墓地から帰ると初七日の法要を行ない、精進落としを行ないます。忌明けは、青森市では三七日、八戸市では五七日に行ないます。
「岩手県」
お通夜に関しては、ほとんど自宅で行ないます。「通夜ぶるまい」という招待を受けた人は香典とは別に「御夜食料」を包みます。お通夜の後、つまり葬儀の前に火葬が行なわれます。こういった火葬を先にするという風習は、本堂に遺体を持ち込むことを禁じられたためと言われています。埋葬は葬儀当日に行なうことが普通です。
「山形」
山形ではお通夜のことを「おつうや」と呼びます。念仏講や観音講の人が集まって御詠歌を唱和します。お通夜の翌朝に、葬儀の前に火葬が行なわれます。出棺に関しては玄関以外のところから行なわれます。葬儀終了後、五七日法要が行なわれます。埋葬は七七日の忌明けに行なわれます。
「福島」
福島では葬儀の前に火葬する地域と、葬儀後に火葬する地域があります。福島市では葬儀の前に火葬を行ないます。葬儀の時に親族の男性陣は「麻のかみしも姿」をします。会津若松市では葬儀の後に火葬を行ないます。玄関先に竹で仮門を作り、そこから棺をくぐらせます。
関東地方
「茨城」
通夜ぶるまいに「餅」「おこわ」「酒」が用意されます。葬儀の後に火葬する地域と、葬儀の前に火葬する地域があります。水戸市では葬儀の後に火葬が行なわれます。棺を担ぐ人を「陸尺」といいます。放生という鳩を放つ儀式もあります。葬儀後に埋葬し、塩をかけて清めます。
「栃木」
葬儀の後に火葬します。農村部では玄関に仮門を作り、棺をくぐらせます。遺体の安置に塩をかけて清めます。土葬を行なう地域も残っています。
「群馬」
通夜ぶるまいに「きよめ」として刺身を出す風習があります。また「ではの飯」という膳が回される風習もあります。遺骨の前で行なう「あと念仏」というものもある。
「埼玉」
郡部や農村部では「出立ちの膳」を回したり、玄関先で茶碗を割るなどの風習が残っています。
北陸地方
「新潟」
浄土真宗の檀家が多いです。農村部では野道具を持って、「野辺の送り」を行なう風習があります。骨壷は用いず、「骨箱」を用います。
「富山」
お通夜に「死花花(しかばな)」を用意し、祭壇に飾ります。棺には白のさらしを巻いて運ぶ風習があります。かつてはこのさらしの布を遺族が持って行列するという風習がありましたが、今は葬儀の前に白い布を持つことで代用しています。
「福井」
納棺には、男性は剃刀、女性にははさみをいれるという風習があります。出棺時には玄関先で送り火を炊いたり、茶碗を割ったりします。喪主は白のかみしもを着ています。
甲信・東海地方
「山形」
火葬率が低いです。友引の日に葬儀を行なうことも多く、その場合は棺に「供人形」を入れます。
「長野」
火葬の後、遺骨による埋葬を行ないます。しかし長野市では葬儀の後に火葬します。喪主は白い布を身につけます。
「岐阜」
寺院での葬儀が多いです。また浄土真宗が多く、枕飾りに水や鈴(りん)を供えることはありません。禅宗では供えます。岐阜は「廃仏毀釈」の影響で神式の葬儀も多く見られます。土葬の地域も多く残っています。
近畿地方
「三重」
しめ縄をつけている地域が多いが、喪家ではこれを外します。お通夜は「夜伽」といいます。
「滋賀」
棺を玄関から出した後に「門勤め」の式が行なわれます。火葬の後に玄関に塩を振りかけてから入ります。
四国地方
「香川」
お通夜を「おつや」といい、近親者が「通夜見舞い」を持参して弔問します。出棺の際に茶碗を割ったり、送り火をしたりします。
九州・沖縄地方
「熊本」
約7割が浄土真宗で、友引でも葬儀を行ないます。従って火葬場は無休となっています。午前中に火葬し、午後に葬儀という場合が多いです。
「大分」
お通夜は「淋し見舞」、通夜ぶるまいを「別れの膳」といい、近親者で故人を偲びます。出棺に際して団子を配ります。棺を3回回す地域もあります。
「沖縄」
葬儀の前に墓を掃除し、入り口に白い布を貼ります。納棺の際には膝を少し曲げるため、棺は短く、深いものが使用されます。夏はお通夜を行なうことがなく、すぐに火葬します。
まとめ
各地域によって、その呼び方や火葬のタイミングの違いなど、その他細かく異なっているものが多々あります。宗派の違い、地域文化の違いにより、独自の文化から葬儀の作法などが固まっていき、今に繋がっている地域も多く残っています。その地域地域で異なる場合は、郷に入っては郷に従え、というように、その地域の風習を尊重して、同じように葬儀を行なうのがよいでしょう。